2015/07/20

東京の空

パリはシャンゼリゼ 東京は武蔵境のすきっぷ通り、と誰もが思い浮かべる、かどうか俺は知らないが、東京の西の郊外に武蔵境という町がある。
その武蔵境のメインストリートをすきっぷ通りという。
今そのすきっぷ通りに面した喫茶店で午後のコーヒーをいかにもうまそうに飲みながら惚けていると、つい先ほど入店してきた一家の父親と思しき人物が他国の道路事情を引き合いに出して、いかに日本の道路が整備されているかを熱弁していた。

やれどこそこの国の道はガッタガタだの、あそこの国の道はうねってうねって仕方がないだの、およそ聞いていて楽しいものではなかったが、その声量たるやなかなかのものだったので観念して聞いていたが、話題が日本の失業率に移ったところで堪らず喫茶店をあとにした。

近頃は専らエデンの稽古である。
tagの公演としてはおよそ一年と半年ぶりの公演。
前作から今までの間で、いくつか自分の中で変化してきたものがあるが、舞台に対する意識が変わり、集中力は以前と比べて段違いに高まり、より持続するようになった。

石垣の音もメロディーが一段と美しくなり、聴いていてよりイメージが湧いてくる仕上がりになっている。
どこか壮大な印象を受ける箇所が何箇所かあり、音のおかげで、より深いところまで分入って行くことができる。

そして共演者の柴田菜々子。
自分が逆立ちしても踊れない程の凄まじい踊りを踊る人。
美しく踊り、情熱的に踊り、踊りで空間をゆらゆら動かす人。
間近で見ていて毎回見入ってしまう。

正雪君は絶大なる愛をもって衣裳をつくってくれる。
実際に正雪君の立ち居振る舞いや言葉の端々にはいつも他者への愛がこもっている。

宇山はこの一癖も二癖もある連中を引っ張り、未だ誰一人見たことのない景色を舞台上に生み出す気迫に満ちている。

どのようなエデンになるかまだ分からないが、各セクションの人間がこの作品に心血を注いで、とんでもないエデンに仕上がると思う。

この作品の中に、あなたの生涯の友たりうる時間が一瞬でも多くあることを祈りながらこの駄文を終わる。