「君との時間を誰かに邪魔されたくないんだよな」
ニュアンスはちと違うが、飲み終え空になったプラスチック製のコップを片ずけながら確かに彼はそう言った。
そんな言葉をかけられたことは、きっと生涯に一度だってなかったので、平静を装いながらも内心はかなり狼狽えていた。
まさか俺のような人間にそんな言葉をかけてくれる人間がこの世の中にいるなんて・・。
己の生活の中で異質な明かりを灯すその言葉は、今やよく反芻される言葉の一つとなっている。
砂のように乾いた、或いは泥のようにぬかるんだ部屋の中で、その言葉を大いに噛みしめようじゃないか。
世間は寒の戻りと騒いでいるが、部屋の中はどこか暖かい。
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